D2C

D2Cとは、「Direct to Consumer」の略で、”消費者に対して商品を直接的に販売する仕組み”のことを指します。すなわち、自社で企画・製造した商品を、ECサイトなどの自社チャネルで販売するモデルのことです。
一般的に企業は、自社商品を小売店に並べて販売するケースが多いです。たとえば、Appleが開発したiPhoneは、Apple Storeなどでも直接販売されていますが、3大キャリアのdocomo、au、SoftBankがおおよその販売経路となっています。このように、自社商品を販売するためには、他社を介して売るケースがほとんどです。
ところが近年、自社商品を他社を介さずに自社チャネルにて直接販売するケースも目立っています。最近ではアパレルや美容関係などが、D2Cを展開している企業としては多いです。
BtoB、BtoCとの違い
BtoBやBtoCは、「誰と誰の取引であるか」を明確にした取引形態を表します。BtoBなら企業が企業に向けて提供するサービス、BtoCなら企業が一般消費者に向けて提供するサービスです。
D2Cも取引形態を表す言葉という意味では変わりませんが、「誰と誰の取引であるか」を示すものではありません。どのように取引をするか、一般消費者に商品をどのように届けるかを表しています。
D2Cは、Directという言葉の通り、流通業者といった他社を介さず、自社で企画・製造した商品を、自社チャネルで直接販売する業態を表します。
なぜ注目を集めているのか
D2Cは近年注目を集めだした言葉ですが、新しい業態というわけではありません。
昨今注目を集めているD2Cは、デジタルでデータやサービスを提供する業態や企業を指すものではなく、アパレルなど実体のある商品を提供する企業です。
これまで商品を一般消費者の手に届けるためには、複数の他社が介入する必要がありました。しかし、実体を持つ商品を扱う業種において、「自分たちで作って自分たちで売る」といった形態をとっているため、新規性の高さなどから注目を集めているといえます。
D2Cがもたらすメリット
D2Cがもたらすメリットは主に以下の3つです。
1. ビジョンや思想をきちんと伝えられる
2. 顧客との関係構築
3. 顧客データの収集
仲介業者を挟まずに、企画・製造・販売を自社だけで行うため、会社のビジョンやブランド思想などを何の介入もなく直接購入者に伝えることができます。オンラインストアでファッションアイテムを販売するアメリカの企業「Everlane」は、”徹底的な透明性”というブランドコンセプトを伝える手段として、販売時に原価率や工場のすべてオープンにしました。これはまさに、D2Cならではのブランディング戦略であるといえます。
企画・製造に加え、販売も自ら行えるため、顧客との関係構築の機会を増やすこともできます。販売する時だけでなく、ブランドについて知ってもらう段階からスタートし、発送中のやり取りや、返品の際のオペレーションなど、顧客との関係は総合的に築かれていきます。
上流(ビジネス)から下流(システム)までを扱うことで、より細かな顧客データの収集および蓄積を行うことができ、さらに新商品開発にも活かしやすい環境を設けることが可能です。
D2Cの成功事例3選
ここではそんな、D2Cの成功事例について3つほど紹介していきます。
Glossier(グロッシアー)
ニューヨーク発のコスメブランド「Glossier」。日本ではまだあまり馴染みのないブランドですが、D2Cの成功事例としてとても有名です。
Glossierの創業者 エミリーワイズ氏は、ファッション雑誌のスタイリングアシスタントとしての経験をもとに、2010年からファッションブログを運営し、月間140万人が訪れる人気サイトとなりました。ブログサイト
エミリーさんのブログにはコスメ好きの熱狂的なファンが多く閲覧しており、ブログ創業から4年が経った2014年には、ブログユーザーがサービスサイトにも訪れ始めました。単にブログで100万人以上のユーザーを集めたのではなく、コスメ好きのリード客の囲い込みに成功していることが分かります。
Warby Parker(ワービー・パーカー)
ニューヨーク発のアイウェアブランド「Warby Parker」。D2Cという業態の先駆者として、小売販売にイノベーションを巻き起こしたブランドといわれています。
2010年にペンシルバニア大学に在籍していた4人の学生が創業した同メーカーは、5年後の2015年にFast Company誌上で、”世界で最もイノベーティブな会社”に選ばれました。
その背景として、圧倒的なコストパフォーマンスとD2Cという革新的なビジネスモデルが評価されています。その革新性は「FOR BUILDING THE FIRST GREAT MADE-ON-THE-INTERNET BRAND:インターネットから生まれた最初の優れたブランド」と紹介されたほどでした。
Quip(クイップ)
電動歯ブラシの定期購入サービス「Quip」。顧客データを管理することで、丁寧なフォローアップを行っている企業でもあります。
Quipは、月額$25(約2,800円)のサブスクリプションモデル で電動歯ブラシを販売しているサービスでありながら、デンタルケアのエコシステムを構築した点が注目を受けています。
Quipの商品を購入したユーザーは、提携歯科医のもとで、定期的に歯のチェックやクリーニングなどを受けることができます。本来、アメリカの歯科医保険は、国民皆保険の必須項目に入っていないため、追加料金が取られるのですが、Quipはこの問題を解決しました。
オンラインで管理する顧客の購入データと、歯科医によって治療を受けた際に収集したオフラインデータを紐付け、新たな商品提案やチェックアップの最適なタイミングを通知できるシステムを導入し、顧客を誘導することに成功しました。
まとめ
さて、今回はD2Cについて解説しました。いかがでしたでしょうか。
D2CはECサイトのような自社チャネルで直接販売するため、創業者が接客や販売の職に就いた経験がないという人も珍しくはありません。
長年存在した、経営は実績がある人が行うものといった風習から逸脱し、いわば”誰でも実行可能”なビジネスモデルとして認識されています。
現代のテクノロジーを大いに活かした最適なシステムをゼロベースから創り上げることができるD2C。既存の流通システムとは大いに異なる点であるといえます。

1500億円企業になるまで
D2Cの波がやってきた。
「Direct-to-Consumer(ディレクト・トゥ・コンシューマー)」。デジタル世代ならではの手法で、消費者に直接商品を届けるビジネスモデルが、アメリカから続々と世界を渡り始めている。
このエリアは、今やユニコーンの宝庫だ。Warby Parker(メガネ)、Away(旅行かばん)、Glossier(コスメ)、Casper(マットレス)などのD2Cは、わずか起業数年で10億ドルの壁を、あっさりと突破した。
そんなD2C王者の一人が、Allbirdsだ。
「世界一、快適な靴」を標榜し、前例のないシンプルなデザインと、環境に優しい新素材を打ち出した新興ブランドは、2014年の起業からわずか5年で、バリエーションを14億ドル(約1500億円)まで高めた。
NewsPicksは、1月に日本にもリアル店舗を開始したAllbirdsの共同創業者ジョーイ・ズウィリンガーに直撃。ロングインタビューを通して、創業から、D2C戦略を通じて、今の状況を築くまでの一部始終を語ってもらった。
アマゾンに対する姿勢を含め、D2C成功の核心が全て詰っているはずだ。


>商品、流通、価値の3つが揃うことで、我々は良いビジネスを立ち上げられましたし、それこそが我々が訴求していきたいこと
アマゾンでは売らないことを美学のように語られているし、私も素晴らしいことだと思うが、その裏では、「流通」と独自の「価値」を生み出すという、異なる分野への追加のリソース投下がバランス良く同時に求められる。
ほんの数年で立ち上げるのはとても難しい舵取りだったと思います。



私は、素晴らしいモノやサービスが、中間商流を介さない(余計なコストをかけない)で最終消費者まで適正価格でたどり着く世界が理想だと考えています。
現在、そんな世界にはまだ遠いけれど、まずは、D2C企業が多くなることと、リスクを取らない卸業者が極力排除され、(利益を独占しない)大きなプラットフォーム企業に集約することによる二極化。二つの大きな陣営の併存なのかなと思っております。

苦境が続く日本のアパレル業界。既存企業は、そこに光を見出そうとしているのか、D2CとEC・オムニチャネル強化というキーワードに踊らされている経営者か、いまだに何も変えない経営者の二手に分かれていることを嘆きます。ぜひ、この2つのメッセージを受け止めて欲しいです。
◯実は、D2Cの中でも、ディープなR&D(研究開発)と、良い流通戦略を結び付けている企業は数えるほどしかありません。
◯アマゾンや楽天のようなECのプラットフォームは、あらゆる製品のカタログみたいなものです。自分たちのブランドが、機能の一つみたいになってしまう。しかも、ストーリーテリングは失われ、製品にかけてきた「深み」も損なわれてしまう。

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