好きな事をしていい時代から好きな事をしないと豊かになれない時代
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“「好きを仕事にしないと豊かになれない」世界は、「主体的に動く人だけが豊かになれる」という、残酷な世界だ。”“「自由に生きられる」は、いつの間にか「自由に生きねばならない」に変わっていた。”
この頃までは、「好きなことをしていい」は、「従来の枠組みからの開放」を表していた。
「従来の枠組みを外れてもいい」
「好きなことをして生きていい」
「疲れましたね、もう周りに合わせて頑張らなくても大丈夫ですよ、好きなことに忠実でいいんです」
そういった「癒し手」の言葉が、「好きなことをしよう」だった。
「ありのーままでー」という「アナと雪の女王」がヒットしたのも、2013年。
あなたは、あなたの好きなようにしていい、ありのままでいい、そういう「勇気」を与えることが、「好きを仕事に」といった言説のバックボーンだった。
こういった言葉に、救われたと感じた人は多かったのではないだろうか。
少なくとも、私はその一人だった。
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ところが最近は様子が異なる。
堀江貴文さんは、「好きなことだけで生きていく」という全く同じようなタイトルの本を2017年に出しているが、内容は上の本と大きく異なる。
何が異なるのか。
それは「好きなことを仕事にしないと、豊かになれない」という警告が発せられていることだ。
本書は、いわば僕からの「最後通告」だと思ってもらいたい。既存のレールに乗って生きていくことは、これからの時代、通用しなくなる。
僕が言う1%の人にならなければ、本当の意味で仕事に没頭することはできなくなる。
「いやいや、ホリエモンが煽っているだけでは?」と思う方もいるかも知れない。
だが、そうではない。
この傾向が顕著に現れたのは、2016年にロンドン・ビジネススクール教授、リンダ・グラットンが「ライフ・シフト」を発表してからだ。
ライフ・シフトではまさに、「好きを仕事に」の具体的な中身が述べられている。
長寿という贈り物を手にする世代は、もっと選択肢が多く、もっと多様な人生を送ることができ、もっと多くの選択をする必要がある。
そのため、正しい道を選び取るために時間を費やすことの重要性が高まる。
未来を見据えて、自分の監視と情熱に沿った教育を受けること。
自分の価値観に適合し、やりがいを感じられ、自分のスキルと関心を反映していて、しかも袋小路にはまり込まないような仕事を見つけること。
自分の価値観を尊重してくれ、スキルと知識を伸ばせる環境がある就職先を探すこと。
長く一緒に過ごせて相性のいいパートナーを見つけること。
一緒に仕事ができて、自分のスキル及び働き方との相性がよく、できれば自分を補完してくれるビジネスパートナーと出会うこと。
具体的にはこうした事が必要になる。
繰り返すが、重要なのは「好きなことを仕事に」が「必要になった」と述べられている点だ。
最近では、「好きなことをする」「いや、仕事はそういうものではない」は議論の対象ですらない。
高度に専門化された社会では、好きなことをして、特定の分野を極めないと、豊かになれないのである。
実務家、起業家、フリーランサー、投資家、芸術家、作家……あらゆる分野の人々が「好きを仕事に」という。
いや、内田樹のような「グローバル資本主義嫌い」の、保守的な思想家ですら、「好きなことをせよ」という。
もちろん、光があれば影がある。
「好きを仕事にしないと豊かになれない」世界は、「主体的に動く人だけが豊かになれる」という、残酷な世界だ。
自分で選びとらない限り、何も手に入らない世界。
「考えたくねえ」
「受け身でいいだろ」
「決められねえ」
「正解を教えろ」
「リスクを取りたくねえ」
が、貧しさの象徴になった世界。
これは、一片たりとも、人に優しくない。
「自由に生きられる」は、いつの間にか「自由に生きねばならない」に変わっていた。
もちろん「そんな世の中は間違っている」という方もいるかも知れない。
「言われたことだけやっていれば、それなりに豊かになれる世界が望ましい」という方もいるだろう。
そう言う人はちゃんと選挙に行って、政治を変えよう。
ただ、現在の世の中の趨勢はテクノロジーを中心とした「専門家」が必要とされる世の中であり、急には変わらないだろう。
経済的に豊かである、ということは、そういうことになってしまったのだ。
だから現代人にとって最も重要な教養は「自由の使い方」だ。
すなわち
自らの人生をどうマネジメントするか。
意思決定をどのように行うか。
どう試すか。
何を学習するか。
そういった「自由」の使い方こそが、長い人生を豊かに過ごすための鍵になる。
もちろん「自由」は軋轢を生む。
とくに「自由」を使いこなせる人々と、使いこなせない人々の断絶は、絶望的なほど広がる可能性がある。
何しろ、「自由」とは「他者から嫌われることだ」と、哲学者のアルフレッド・アドラーが言ったぐらいだ。
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